2019-12-09

戦ってない奴はいつだって戦う奴を笑うんだ

創作活動映画家族親母親兄弟

小学一年生の時、同級生の女の子のお母さんが亡くなって、お葬式に同級生と行ったんだよね。行ったらその子の弟がいて。ちょこんと座布団にすわって。彼はまだ何にもわかってないんだろうなと思ったけど、僕だって「親が死ぬ」なんてどういうことか、わかってなかった。彼は5歳で僕は7歳だった。続く
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 01:43:10 +0000 2019

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2年して、その男の子がよくうちの家に来るようになって。僕の弟と同い年で、小学校に入学して同じクラスになり、仲良くなったらしかった。それから結構、夕飯は一緒に食べたり、場合によっては夕方家に帰ってきたら、彼とうちの母だけがご飯を食べてたりしてた。
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 01:43:40 +0000 2019

弟と彼は同じソフトボールチームに入り、中学でも同じ野球部で、基本的にずっと一緒にいて。高校で初めて進路が分かれた。僕が18歳の夏、ド田舎の母の実家に行ったら、彼が居たんだよね。弟は部活とかで居なくて、弟の友達の、高校1年の彼が一人で母の実家に居たの。
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 01:44:06 +0000 2019

なんでいるの？って聞いたら「いやなんか高校辞めようかと思って。おばちゃんに相談しに。えりぞくんのこととか、子供がうまく行ってない状況に詳しいと思って」
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 01:44:37 +0000 2019

そんなこんなで、3週間くらいして、彼は帰って行った。母の友達グループに混ざってカラオケとか行って楽しそうだったね。もちろん僕は行ってない。
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 01:44:52 +0000 2019

その時彼に聞かれたことがあって。「ハリーポッターの映画、つまらなくないですか？」って。「原作読んだ人向けなんじゃないの？どんな映画が好きなの？」って返したら「映画、全然観たことないんですよ。この間ポッターとマトリックス、えりぞ君のお父さんが持ってたから借りて観ました」
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 01:45:06 +0000 2019

結局彼は高校を辞めずに卒業して、映画の専門学校に入って、一年持たずに学校を辞めた。そのあとブラブラしたり、よくわからない工場バイトとかしてた。うちの母親は癌になって、「あと数年頑張りましょう」になってた。
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 01:45:21 +0000 2019

ある日家にマジックの汚い字でタイトルが書いてあるDVD-Rがあって。エロ系なら隠せよ父ちゃんって思って「なにこれ」って聞いたら、映画の専門学校を辞めた彼が置いていったって。「うちの母ちゃんが話したことで思いついたことを映画にしたから、観てほしいんだって」
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 01:45:51 +0000 2019

「自主製作映画ってやつ？映画の学校辞めたんじゃないの？」「やることないから、当時の同級生と作ったんだって」その映画がどこかの自主製作映画祭の準グランプリになったと後で聞いた。
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 01:46:06 +0000 2019

「あの子が準グランプリの報告に来たとき『私の言葉と、アンタの映画での言葉、捉え方が違うね』って言ったの。言葉は難しい」母はもう身辺整理を始めていた。
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 01:46:21 +0000 2019

「映画を撮るのにお金かかるでしょ、バイトしながらで撮れるの？って聞いたら、難しいっていうからさ、30万円渡したんだ。これで好きな映画を撮れって、アンタには絶対才能があるって」その一年後くらいに母親は死んだけど、ホスピスで彼はずっとそばにいてくれた。
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 01:46:37 +0000 2019

その二年後に映画ができて、日本橋の国立映画アーカイブで試写会があって、観に行った。冒頭、「プロデューサー」として母の名前がクレジットされていた。上映後、監督が出てきて「自分は実の母親が5歳で死んでるんですけど、もう一人母親みたいな人がいて、それがプロデューサーです」って挨拶だった
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 01:47:03 +0000 2019

「アンタもあの子も、弟とは違ってまともには生きていけない人間なんだから、よく考えたほうが良いよ」という母の言葉を時々思い出す。監督はカナダの映画祭に呼ばれたとかで、よく海外に行っている。
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 01:47:28 +0000 2019

彼が映画の専門学校に進んだ時、辞めたとき、「ええ？アイツ2年前はほとんど映画みたことないっていってたぜ」と笑ったのを思い出す。戦ってない奴はいつだって戦う奴を笑うんだ。
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 02:41:24 +0000 2019

@erizomu なんだこのかっこいい話…
— Tsukiko(@TSUKI_TSUKI69)Sat Dec 07 03:09:03 +0000 2019

@TSUKI_TSUKI69 かっこいいのは弟の友達で、私は「アイツTSUTAYAのカードも無いのに映画の専門行って途中で辞めた」みたいなこという悪役なんですよね…
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 03:14:35 +0000 2019

@erizomu いい話しだ。この話しも何かの形に残せるといいのに。
— teru_len(@teru_len)Sat Dec 07 03:15:54 +0000 2019

@teru_len 読んでくれてありがとうございます。一人主要人物が生き残っていて、彼にバレたくないので、このお話はどこかに消えて行ってもらいたいんですよね。
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 03:27:19 +0000 2019

@erizomu すぐにわかりました、その監督の作品が大好きです
— 丘野こ鳩(@ryokutou)Sat Dec 07 04:20:20 +0000 2019

@ryokutou 読んでくれてありがとうございます。でも胃が痛くなりました。
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 04:21:37 +0000 2019

@erizomu そのいきなりの30万円が、将来の映画監督を作ったんですね…
— 有希。(@yukilundeberg)Sat Dec 07 11:56:03 +0000 2019

@erizomu @kogure 誰なんだろう？
確かに気になる
— Katsuya Kamitani(@k_kamitani)Sat Dec 07 13:02:05 +0000 2019

@erizomu 上手い。脚本家になれるよ。
淡々とした語り口好きだよ。
— なにがし侍(@yassny)Sat Dec 07 13:13:09 +0000 2019

@yassny まじすか！読んでくれたありがとうございます。仕事の報告かLINEとかでしか文章書かないから、すごい意外な話で、こりゃあ監督に売り込みに行くかな…。
— えりぞ(@erizomu)Sat Dec 07 13:22:01 +0000 2019

@erizomu もしやと思って調べらたドンピシャでした。いい話、ありがとうございました！
— わだげんた(@wagellows)Sat Dec 07 13:37:22 +0000 2019

@erizomu あまりにもその映画が気になり、興味本位でこの文章の中からキーワードを探してググってみたところ見つけてしまいました☺️
素敵な作品に出会えました。ありがとうございます。☺️
— さな(@sun_chaaaan)Sat Dec 07 15:55:30 +0000 2019

@erizomu 監督が誰か気になりますが、最後の「戦ってない奴はいつだって戦う奴を笑うんだ」は中島みゆきの「ファイト！」ですね。
— ごとみろ(@fmanimani)Sat Dec 07 22:25:17 +0000 2019

@sun_chaaaan @erizomu どのキーワードで調べましたか？
— 楓花(@takuya_uver104)Sat Dec 07 23:17:39 +0000 2019

@erizomu 生きていて一人でも自分がいきる先の人に会えた事やその人だと気が付いた友人の慣性が凄い、気が付かないでそのまま適当に時間を過ごす事になる人が多いなか、彼は気が付いて頼って放さなかった、年齢は関係ないんですね
一人そういう人に出会えるかで人生かわります。
— EMoMMo(@EMoMMo928)Sun Dec 08 01:18:59 +0000 2019